遺言書の書き方を例を交えて徹底解説します!
投稿日:2017年08月08日 更新日:2021年07月14日
ゆーすけ |片付け部編集長
片付けが好きで、妻を巻き込んで毎週断捨離を行っています。仕事でも遺品整理、ゴミ屋敷、生前整理、不用品回収、特殊清掃の現場に行き、プロの技を学んでいます。片付けをしたい方にとって有益な情報をお伝えいきたいと思っています。
遺言書を書こうと思われたということは、それなりの想いがあってのことでしょう。
自分が築き上げた財産をどのように遺すのか、どのような想いを伝えたいのか、何日も何か月も考えたはずです。
それでもいざ遺言書を書こうとすると、なかなか書き進められないという経験をされた方も多いのではないでしょうか。
そうやって、ようやく書き上げた遺言書が、あなたの亡くなった後、ただのメモ紙になってしまったとしたら、どうしますか?遺言書の正しい書き方を知らなかったせいで、あなたの真摯な想いが全て吹き飛んでしまうこともあるのです。
そのようなことは絶対に避けなければなりません。遺言書の書き方をしっかり理解して、あなたの想いを遺しましょう。参考になる遺言書の書き方例も紹介しますので、参考にしてください。
遺言書の書き方を知る前に、遺言とはどのようなものなのかを先ず確認しておきましょう。「遺言」は「ゆいごん」とか「いごん」と読みますが、法律家は「いごん」と言います。
ですから皆さんも「いごん」と言うと、少し専門家っぽくみられるかもしれませんね。
さてその遺言ですが、自分の死後、「財産(・身分関係・祭祀・遺言執行)」をどのようにしたいかという「意思」を明確にしておくものと理解すると良いでしょう。
このように理解しておけば、遺言書の書き方を正しく覚えられるはずです。
テレビドラマで人が亡くなると、「遺書が見つかったから自殺ではないか」とか、「遺書が見当たらないから他殺ではないか」、というような刑事役の台詞を耳にします。
こういう場面で遺言とか、遺言書という言葉はあまり耳にしません。ここで言う「遺書」というのは、遺言書と同じものなのでしょうか。
正確に言うと別物です。同じものを指すこともあるでしょうが、基本的に別物です。遺書とは亡くなる前に書き残したもの、という意味しかありません。
テレビドラマの例で言いますと、「〇〇を殺したのは自分です。死んでお詫びします」というような書置きです。それに対して遺言書というのは、遺言を書き記したものです。
改めて確認しておきますと、遺言とは自分の死後、「財産(・身分関係・祭祀・遺言執行)」をどのようにしたいかという「意思」を明確にしておくものでした。
その意思を書き記したものが遺言書ですから、先ほどの「死んでお詫びします」という書置きは遺言書とは言えないのです。
では、次のような例はどうでしょう。「死んでお詫びします。私の財産は全て長男と長女に平等に相続させます。」これは、財産についての意思を明らかにしていますから、立派な遺言と言えそうです。
それを書き記したのですから、当然遺言書となります。
ところが、実はここからが問題なのです。この遺言(書)、法律的には何の意味もないのです。あえて「法律的には」としましたが、道義的には十分意味があります。
「親父はそんなことを考えていたんだ」と子どもたちが理解できるものを遺したのですから。それでも法律的には遺言書が無かったのと全く同じ結果になります。
民法という法律は「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない(第960条)」と定めています。
定められた方式通りでなければ、法律的には「遺言」、「遺言書」と認めてもらえないのです。
ここまでを整理しておきましょう。遺言とは自分の死後、「財産(・身分関係・祭祀・遺言執行)」をどのようにしたいかという「意思」を明確にしておくもので、それを書き記したものが遺言書となります。
しかし、民法の定める方式通りにしておかないと、法律的には全く意味がありません。法律的には全く意味がないことを、「無効」と表現します。
普段の生活の中で書き記す遺言の他に、乗っている飛行機が墜落しそうになった時のような場合に書き記す遺言についても、民法は定めています。
後者のような危険が差し迫っている状況で、冷静に遺言書を遺すことは現実的には難しいと思われます。
そのようなケースにも備えて、普段の生活の中で遺言書を書き遺しておくことの方が余程現実的ではないでしょうか。
そこで、日常生活の中での遺言書の種類と書き方についてご紹介しましょう。
遺言書の中で最もお手軽な方式です。誰の手も借りずに、自分一人で書き遺すことが出来るからです。
書き方を一言で言うならば、「便箋等の紙に自分で手書きしてください」となります。もう少し詳しく書き方をご紹介すると、ボールペンか万年筆で書きましょう。
「自筆証書」という名前の通り、自分で書かなければ、法的に無効となります。遺言書であることを明確にし、書いた日付を記します。署名・押印が必要です。
封筒に入れなくても大丈夫ですが、一般的には見られないように封筒に入れておくのがお薦めです。
後日修正したくなった場合は、修正箇所に署名・押印し、修正・削除等とわかるように記しておきます。
使用する印鑑は認印で構いませんが、遺言書に使用する印鑑は全て同じ印鑑である必要があります。
そして大事なことが二つ。遺言書を遺していることを信頼のおける人に伝えておくことです。
そうしないと、せっかく書いても誰も気付かないで時が流れてしまうかもしれません。
そして、遺言書を書いた方が亡くなった後に、家庭裁判所で遺言書の「検認」を受ける必要があります。
公証役場に出向き、公証人に遺言の内容を伝え、遺言を公正証書として残す方法です。公正証書にすることで、裁判の判決と同じ強制力を持ちます。
遺言案を自分で用意し、公証人という専門家が正式に遺言書として書き記しますから、不備の無い完璧な方式で遺言を残せます。
将来相続人とならないような人を2人証人として必要とします。体の不自由な方で公証役場に行けないような方は、公証人に出向いてもらうことも可能です。
公正証書となった遺言は、原本が公証人役場に残され、正本は遺言者に渡されます。無くしてもまた発行してもらうことが可能です。
大変便利な分、公証役場にお願いする費用は負担しなければなりません。財産によって変わってきますが、最低16,000円からとなります。
公正証書遺言書を作るには、公証人と証人2名に内容が知れ渡ってしまいます。それを避けて、自分以外には秘密にしておきたいというときに、秘密証書遺言書を作ります。
書き方は自筆証書遺言と基本的に同じですが、手書きでなくとも可となります。PCで作っても構いません。署名だけは自分で手書きしましょう。
出来上がった遺言書を封筒に入れて公証役場に持っていきます。この方式の目的は、遺言書があるということを明らかにしてもらうことです。
自筆証書遺言書の場合には、誰にも気付いてもらえなかったというケースもあるので、遺言書があることを証人に知っておいてもらうのです。
公証役場の費用として、11,000円が必要です。
遺言書を書いておくことは、大変良いことだと思います。残された家族にとっては、遺言者の意思を知ることができる唯一の方法だからです。
特にこれからご紹介するケースでは、遺言書が本当に必要となります。
では、一つずつみていきましょう。
1は、遺言書で揉め事を避けることができます。
親が生きている間は仲良くしていた兄弟姉妹でも、親亡き後は状況が変わるケースが多いため、付言の書き方を工夫して遺言書の効果を高めることができます。
2の相続人がいない場合、遺言書によって遺産の処分を明確にできます。会ったこともない甥や姪が相続人になるような場合は、権利の主張合戦になる可能性があります。
誰も本当のことを知らないので、「自分はよくめんどうをみた」と主張し合い、少しでも多くの遺産を手にしようとする人も出てきます。
遺言書によって、そのような揉め事を回避できる可能性が高いでしょう。
3のように想いがあるのならば、それを遺言書としてまとめておけば、実現できます。遺産はその方のものなのですから、本来どう使っても良いのです。
遺産となっても、遺言書に込められた想いで自由に処分・活用できるのです。
籍を入れていないご夫婦の場合、相続においては、より丁寧に対応すべきです。なぜなら事実婚(内縁)の相手には相続権がないからです。
相続権のある人への配慮は当然必要になります。例えば夫80歳、妻(事実婚)70歳、夫の子50歳というケースにおいて、遺言書の書き方例をご紹介しましょう。
遺言者 山川太郎は次の通り遺言する。
平成○年○月○日
東京都中央区○○○丁目○番○号
ポイント
このケースでは、5の付言(ふげん)事項が特に重要です。
付言事項というのは、本来は遺言として法的に力を持てる内容ではありませんので、分かり易く言えば「おまけ」です。
おまけの方が実は重要というのも、何だかおかしな話ではあります。しかし本当なら父親の財産を全部もらうことができる長男の和夫氏に、無理なお願いをするのです。
こういう状況では、情に訴えるしかありません。人は所詮感情の生き物です。そこで付言を使って、上手くお願いをするのです。
隠し通してきた子どもの存在を、亡くなる前に公にすることは今までも行われてきました。
一大決心をして遺言書で明らかにしておきながら、遺言書の正しい書き方が出来ずに無効となっては、まさに死んでも死にきれない事態と言えるでしょう。
このような場合の遺言書の書き方例をご紹介しましょう。
遺言者 山川太郎は次の通り遺言する。
ポイント
遺言書を書いた人が亡き後、残された家族と認知された隠し子(非嫡出子)の間で、揉め事が起きそうなケースです。
このように隠し子を遺言書で公にするということは、付言ではカバーできません。何を言っても(書いても)、火に油を注ぐだけでしょう。
そこで第三者たる遺言執行者を指定しておき、粛々と相続の手続を進めてもらえるようにしておくとよいでしょう。
親への虐待等を理由に、本来ならば相続人となるべき子に相続させない(廃除)遺言書を書くことができます。書き方の例をご紹介しましょう。
遺言者 川辺亮は次の通り遺言する。
平成○年○月○日
東京都中央区○○○丁目○番○号
遺言者 山川太郎
第892条(推定相続人の廃除)
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
第893条(遺言による推定相続人の廃除)
被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
ポイント
事前に家庭裁判所に申し立てると、調停が行われますが、それを理由により暴力・虐待が悪化する恐れがあります。
ですから遺言者の亡くなった後に、第三者たる遺言執行者に廃除の申し立てをするようお願いするのが無難です。
遺言書の書き方と書き方例をいくつかご紹介いたしました。法律的に意味のある遺言をするには、形式的な面での書き方と内容的な面での書き方を理解しておくことです。
形式的な面は、日付や自署・押印等です。内容的な面では、財産・身分関係・祭祀に関する内容について法的な意味を持てるということです。
情緒的な内容はあくまで付言として、おまけにしか過ぎません。でも付言を上手く使うことも必要でした。
せっかく書いた遺言書が無駄に終わらないように、専門家に確認してもらうことも大変意味のあることです。
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