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投稿日:2017年04月29日 更新日:2021年03月30日
ゆーすけ |片付け部編集長
片付けが好きで、妻を巻き込んで毎週断捨離を行っています。仕事でも遺品整理、ゴミ屋敷、生前整理、不用品回収、特殊清掃の現場に行き、プロの技を学んでいます。片付けをしたい方にとって有益な情報をお伝えいきたいと思っています。
遺言状とは、資産家や会社経営者といった土地や預貯金が沢山ある一部の裕福な人が書いておくものだと思っていませんか?実は、そうではありません。ごく普通の一般家庭でも残された子らによって思わぬ紛争になってしまうといった事が多々あります。
我が家には関係ないと思っていたらそれは大きな間違いです。自分の死後、身内にそういった争いがないように、生きている内に遺言状を書いておくことで遺言者の遺志を遺産の分割に反映させ、相続人同志氏のトラブルを防ぐことができます。
ここでは「遺言状とは」よく聞く言葉だけれど具体的にどうしたらよいかわからないあなたの為に、遺言状について学んでいきます。
遺言状とは、自分に万が一の事があった場合、自分の土地建物、預貯金等の財産を、誰にどれだけ託すか決めた意思表示を規定に従って書いたものです。
遺言状とは、自分の意思表示を伝えるものなので、基本的に満15歳以上であれば、誰でも作成することができます。但し、遺言能力がない物が作成した遺言状は原則として無効になります。
では、遺言状とは、なぜ必要なのでしょうか?
遺言状がない場合、子や、身内達での骨肉の争いが起こる原因ともなります。血を分けた物同志での争いは利害が生じると、他人以上の憎悪を生んでしまいます。自分が残した財産によってそんな争い事をなくす意味でも遺言状が必要なのです。
下記のグラフを見てください。
[caption id="attachment_6218" align="aligncenter" width="882"] クリックして拡大[/caption]2015年に調停が申し立てられた遺産分割事件の内、調停成立または認容された事件の遺産額を見てみると、1,000万以下が32%、5,000万以下が44%、合計すると5,000万以下が実に76%と大半を占めています。相続におけるトラブルは富裕層たちだけの話だと思っていた方も多いと思われますが、実際には平均的な家庭の相続のトラブルの方が多いのです。
もはや、遺言状なんて無関係だと思っていた一般の家庭の人そ遺言状が必要なのです。
また、下記の場合は特に遺言状を用意しておく事でトラブルを防ぐことができます。
下記のグラフは、裁判所「司法統計年報」による、遺産相続のもめ事で家庭裁判所に相談にきた件数の年代別推移です。
こうしたトラブルが年々増加傾向にあるのがよくわかります。
[caption id="attachment_6253" align="aligncenter" width="629"] クイックして拡大[/caption]遺言は、民法の一定の規定に従って作成し、遺言者の死後、はじめて有効となります。
また、遺言は、本人の意思を尊重するものですが、何でもかんでも効力が発揮できるわけではありません。遺言状に指定できる事柄は決まっているのです。
つまり、遺言状は、一定の方式で書かなければ無効になり、指定以外の事を書いても無効となるのです。
では、遺言状によって効力を発揮できる事柄は何でしょうか?
遺言者の財産は原則として配偶者や子といった法定相続人に相続されますが、法定相続人以外の人に財産を残したい場合や、財団法人に寄付をしたい等社会貢献に役立てたい場合に遺言に記し、指定することができます。
相続人の相続分は一定の規定があり、分割については、相続人達の間で協議を交わし所定の相続分に応じた遺産の分配を決めますが、この協議において分配方法で争わない為に、遺言者は遺言状に明記することで、遺産の分配方法を自由に決める事ができ、遺産分割方法を第三者に委託することができます。
さらに遺言状に記すことで、相続開始から5年を超えない機関で、遺産の分割を禁じることができます。これは、相続人間の遺産分割をめぐるトラブルを防ぐ為に5年の間にじっくり考える時間を設けるということです。
遺言者が生前において、相続人となる予定の人から虐待や侮辱等、法定の廃除事由が認められた場合やその相続人に遺産を残したくない場合には、遺言状に記すことによって相続権を取り消すことができます。
また逆にすでに家庭裁判所に「推定相続人の廃除」を認めてもらっている場合は、遺言によってこの廃除を取り消すことができます。
遺言者の子が未成年であり、遺言者が死んだ後に親権者がいなくなるような場合に、第三者を未成年の子の後見人とし、財産管理等を託す事を遺言状で指定できます。
また、認知したい子がいる場合、通常認知するということは、戸籍法による戸籍手続きが必要ですが、遺言状に明記することにより認知することができ、認知された子は正式な子となり、法定相続人となります。
遺留分とは、民法によって保障されている相続人が相続する財産割合の事です。
この割合は、配偶者、子の遺留分割合は、法廷で定められている相続財産の1/2、直系尊属の遺留分割合は相続財産の1/3です。兄弟姉妹には遺留分はありません。
財産割合について、上記で記した通り遺言者が自由に遺言状に意思表示ができますが、遺言状に財産全額を寄付するといった内容や、全く関係ない他人に全ての財産を与えるなどと記された場合、遺産をあてにしている相続人らにとっては、財産が1円ももらえないなんて納得が出ません。
また、他の相続人と比べて極端に少ない分割割合を記されていた場合等も同様に、遺留分権利者である相続人は、「遺留分減殺請求」により、遺言状に該当する遺留分を害する部分を無効とすることができます。
遺言者が自由に相続分の指定を遺言状に記しても、法定相続人の遺留分を侵害した部分についてまで他の相続人に遺産を渡したり、寄付をしたりできないのです。
遺言状を作成するにあたり、何かと問題になるのが、この遺留分です。遺言状を記したことによって争いの元とならないように、残された子らの事も考え円満に事が進むように作成しましょう。
しかしながら、遺留分を侵害してまで記した遺言者の気持ちを深く読み取る事も大切です。
「遺留分減殺請求」をするかしないかは、相続人の自由です。
遺言状において、その効力が発揮できる内容について上記で学びました。では、遺言状で自由に意思表示を記しても、法的には効力がない場合があります。
このような要望は法的には無効になります。但し同意するかしないかは、相続人の自由です。
では、次に遺言状の書き方について学んでいきましょう。
遺言状は、大きく分けると普通方式と特別方式の2つの書式があります。
一般的に遺言は普通書式遺言によって行われます。
普通書式遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
公正証書遺言と、秘密証書遺言を作成する場合、公証役場に出向くことになります。あらかじめ最寄りの公証役場を調べ、連絡をし、必要書類等を聞いておきましょう。
自筆証書遺言とは、遺言全文を自分で書く遺言の事です。いつでも自分が書きたい時に書くことができます。
注意点としては下記の事があげられます。
(裁判所の検認とは、遺言者亡き後の遺言状の発見者や保管者が家庭裁判所に遺言の存在を明確にしてもらい、偽造されることを防ぐための手続です)
公正証書遺言とは、最も確実な方法であり、公証役場で公証人に作成してもらう遺言のことです。
遺言者が公証人役場の公証人に遺言内容を伝えて、公証人はその内容を遺言状に作成していくやり方です。裁判所の検認も必要ありません。
公証人からの適切なアドバイスを受けることもできるので、確実で安全な方法である公正証書遺言を作成する遺言者が下記のグラフの通り年々増えています。
[caption id="attachment_6250" align="aligncenter" width="884"] クリックして拡大[/caption]公正証書遺言では、2人の証人が必要になります。この証人は、20歳以上で自分の親族ではなく、財産を相続する予定の無い人に限ります。もし信頼のおける友人がいない場合は、弁護士や公証役場の公証人にお願いすることができます。
公証人によって作成された遺言状を遺言者と証人2人の前で、読み上げや、閲覧をするので、内容が全部わかってしまうといったデメリットがあります。公正証書遺言の原本は、公証人によって保管されるので誰かに改ざんや偽造される心配はありません。遺言者には原本と同一の効果がある正本が渡されます。公正証書遺言を作成してもらうには、手数料がかかります。
公証人手数料令第9条よるれば、法律行為に関わる証書作成の手数料は下記のように定められています。
法律行為の目的の価額 | 金額 |
100万円以下のもの | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下のもの | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下のもの | 10,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 17,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下のもの | 23,000円 |
3000万円を超え5,000万円以下のもの | 29,000円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 43,000円 |
1億円を超え3億円以下のもの | 43,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下のもの | 95,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円を加算した額 |
10億円を超えるもの | 249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額 |
この手数料は、財産を相続する人ごとに計算し、合計します。
例えば、遺言状で妻に2,000万、長男に1,000万、次男に500万と記す場合は、
妻23,000円+長男17,000円+次男10,000=50,000円
この場合、合計の50,000円が遺言状作成にかかる手数料になります。
秘密証書遺言とは、遺言者が自分で作成した遺言状を誰にも知られたくないといった場合に使われます。遺言状に署名、押印し封印後にこれを、公証人役場へ持っていき、遺言状の内容を秘密にしたまま、遺言状の存在について公証人に証明してもらう方法です。
公正証書遺言のように遺言状の内容を他の人に知られることはありません。
ワープロやパソコン、代筆も可能ですが、署名と押印は必ず遺言者本人が行わなければいけません。
但し、秘密証書遺言として何か不備があった場合、自筆で作成し、自筆証書遺言の条件を満たしていれば、遺言状として認められるので、できれば、自筆で書いておくのがよいでしょう。
公正証書遺言と同じように、証人2人と作成した遺言状をもって、公証役場に行き手続きします。公証人によって証明された遺言状は、遺言者本人が保管します。
秘密証書遺言を証明してもらうには、手数料として、定額11,000円がかかります。
自筆遺言と同じように裁判所の検認が必要になります。このように手間と費用が掛かる割に公正証書遺言のように確実性がないため、3つの方法の中でも一番利用者の少ない方法になります。
普通書式遺言一覧表
自筆遺書 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
作成方法 | 本人の自筆で判読しやすい文字で記入 | 本人が公証役場で口述し、公証人が筆記 | 本人が作成した遺言書を、公証役場で証明してもらう |
書式 | 自筆のみ(ワープロ、パソコン不可) | 公証人の筆記(口述筆記) | 本人、パソコン、代筆可 |
日付・署名・押印 | 本人 | 本人・証人・公証人 | 本人 |
封入・封印 | 望ましい | 必要なし | 必要 |
証人 | 不要 | 2人以上の証人の立会が必要 | 2人以上の証人の立会と公証人が必要 |
費用 | 不要 | 公証役場(相続する額による)+証人依頼費用 | 遺言者本人 |
遺書の存在 | 秘密にできる | 秘密にできない | 秘密にできない |
保管 | 遺言書本人 | 原本は公証役場 正本は遺言者本人が保管 | 遺言書本人 |
家庭裁判所の検認 | 必要 | 不要 | 必要 |
メリット | ・費用がかからない・いつでも書ける・証人がいらない・秘密が保てる | ・紛失、改ざんの心配はない・怪我や病気で字が書けなくても問題ない・遺言状の存在と内容を明確にできる・家庭裁判所で検認してもらう必要がない | ・代筆、パソコン、ワープロでも有効・秘密証書遺言として不備があっても自筆証書遺言の要件を満たしていれば効力が認められる・遺言状の存在を明確にすることができる・秘密が保たれる |
デメリット | ・怪我や病気で自分で字が書けない人は利用できない・不備があると無効になる・紛失・改ざんされる危険性がある・遺言状作成時に遺言能力があったか後に争われることがある・家庭裁判所の検認手続きを受けなければならない | ・公証人と2人の証人に遺言の内容がわかってしまう・手数料がかかる(公証人、証人2人)・手間がかかる | ・紛失、改ざんされる危険性がある・秘密証書遺言として不備があり、自筆証書遺言の要件も満たしていない場合は、無効になる・手数料がかかる・家庭裁判所の検認手続きが必要になる |
特別方式遺言とは、緊急時や外界と隔離されている場所にいる人や、特殊な状態の人が書く遺言状の事を言います。遺言者が普通方式による遺言が書けるようになった場合、その時から6ヵ月生存すると特別方式で書いた遺言状は無効になります。
特別方式の遺言は下記表からわかるように殆ど用いられることはありませんが、こういった方式もあるということを理解しておきましょう。
特別方式遺言死亡危急社遺言 | 病気やその他の理由で死亡の危機がある場合に、3名以上の証人の立会いの下で行う遺言。 |
船舶遭難者遺言 | 遭難中の船舶の中で死亡の危機がある場合に、証人2名以上の立会いの下で行う遺言。 |
伝染病隔離者遺言 | 伝染病などで外界との接触を断たれた場所にいる者が、警察官1名と証人1名以上の立会いの下で行う遺言。 |
在船者の遺言 | 航行中で外界から隔絶されている者が、船舶関係者1名及び証人2名以上の立会いの下で行う遺言。 |
遺言状を作成するには正確さが重要になってきます。記載事項に誤りがあった場合、その箇所が無効になってしまう事があります。不備がないように、事前に必要な事柄を把握しておきましょう。
遺言状を作成するにあたり、遺言者の財産の一覧表を作成しておくと相続財産をきちんと把握することができます。
財産 | 資料 |
土地、建物、農地、山林 | 賃貸借契約書、登記簿謄本 固定資産評価額証明 |
預貯金、債券 | 株券、預り証 |
株式 | 株券、自動車保険の証券 |
自動車 | 車検証 自動車保険の証券 |
生命保険 | 保険証券など |
借入金 | 借用書 |
法定相続人をしっかり把握しておきましょう。誰に何を残したいか、どのようにしたいか、じっくり考えておきましょう。法定相続人以外に遺産として残してあげたい場合や寄付をしたい場合等は、後々のトラブルにならないように、遺留分についても配慮しておきましょう。
近年終活という言葉をよく聞きますね。そんなブームの影響なのか、遺言状を作成する方が増えています。遺言状は消して資産家だけの物ではなく、最も相続によるトラブルが多いといった平均的な家庭において、むしろ必要なものだと学びました。
遺言者亡き後、大切な家族が争うのは、避けたい事です。本人の意思をしっかり伝えていくという意味でもこちらで学んだことを参考に、遺言状を作成しておくことをおすすめします。
また、近年ブームの終活ですが、詳しく知りたいなと思った方は「終活とは何か」をご覧になってみてください。きっと、あなたにとってよりよい情報が掲載しています!
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